江上剛『会社という病』(講談社、2015)

江上剛『会社という病』(講談社、2015)

元銀行員の著者がその経験を踏まえつつ、銀行組織を通じて「会社という病」の構造に迫ったもの。

支店営業から業務部を経て、長く人事部人事グループに勤めた著者だけあって、「人事」「出世」「派閥」「経営企画」などの切り口から社内エリートの構造と彼らの意識に踏み込んでいます。

出世や社内の勝ち組に対して皮肉な視線を向けていますが、著者自身のちに都内支店長や本部次長を務めたそれなりの勝ち組です。(総会屋事件もあり49歳で早期退職しているとはいえ)

ただの敗残者が「役員なんぞになれなくてもいいや」というのと、現実に役員に手が届く位置にある人がゆえあってそれを回避するのとはまったく意味合いが違ってきます。

【本文より】
◯なぜこんな信じられないような事件が頻発するのか。答えは一つ。社員が疲れきっているからだ。会社でストレスが無いのは経営者だけだ。社員は誰もが「助けてくれ!」と悲鳴をあげている。

◯長くサラリーマン人生を送ってきた者として、できるアドバイスはただ一つ。出世なんかするな − だ。

◯世の中の上司にはいろんなタイプがいる。中でも最悪なのは、部下を育てようとするタイプだ。上司にその能力があればいいのだが、その力もないくせに部下を自分色に染めようとする。これは最も始末が悪い。

◯バカ上司からは逃げろ。もしくは大声で戦え。
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鈴木博毅『最強のリーダー育成書「君主論」』(KADOKAWA、2015)

鈴木博毅『最強のリーダー育成書「君主論」』(KADOKAWA、2015)

商社→コンサルを経て独立、戦略論や企業史の研究を深め、韓非子の解説書などを物した著者によるリーダー論。
マキャベリ「君主論」を噛み砕いて現代に適用する読み方を示しています。

組織で栄達するため、あるいはただ生きのびるため。
何を見て、どう判断し、どう動くか。

本書では言及されていませんが、官僚としての栄達に失敗し隠棲の日々に「君主論」を書き上げたマキアヴェリの後悔と観察、失敗例からの成功アドバイスという観点で噛みしめることもできます。

【本文より】

◯組織で出世してよい思いをしたければ、勝てる人につく必要があります。
 上司の「生き残る力」の高低も、あなたが判定いなければなりません。

◯自分の人生を他人に操られる者が、豊かな人生を遅れるはずがない。
 変化の波を乗りこなせない者は、今の立場さえ守れない。
 だからこそ、マキアヴェリは常識を否定してみせるのです。

◯成果を決めるのはあなたではなく「状況」なのです。

◯「よいリーダー」であろうとすることも、過度になれば部下に操られます。

◯外からの評価に過剰に気を取られると、無駄な消耗につながることです。
 それは人生の主導権を失うことなのです。

◯君主が問題の最前線に姿を現すのは、支配力の象徴としてなのです。

◯君主の知恵は、行動することです。
 支配力を高める機会を逃さないことです。

◯誰かが自分に何かをしてくれるとただ期待するのは、愚かです。
 そんなことは、稀にしかおこりません。
 自分の力による成果ではないので、再現もできません。




■原典はいろいろな翻訳で読むことができます。
中公BIBLIO版 比較的馴染みやすい


岩波文庫版 


講談社学術文庫版



■入門編もいろいろ
マキアヴェッリを熱愛する”塩婆”先生


大学院生(当時)による物語風解説



■発展的批判

進化心理学とゲーム理論で『君主論』や『孫子』、クラウゼヴィッツ『戦争論』が説明できるという橘玲氏による指摘が興味深い。


ジャック・シェーファー『元FBI捜査官が教える「心を支配する」方法』(大和書房、2015)

ジャック・シェーファー『元FBI捜査官が教える「心を支配する」方法』(大和書房、2015)

怪しいタイトルですが、心理学の研究成果を踏まえた「好意を得る方法(敵意を示す方法)」「相手を誘導する方法」「相手の怒りをコントロールする方法」の実践ガイドといった趣。元FBI、舶来モノというあたりがメンタリストさんよりも信頼感を与えます。

著者はスパイ・テロ対策の捜査官を15年経験した後、行動分析プログラムの分析官を7年勤め、これらの経験を活かして心理学教授に転じています。

好意の返報性、ミラーリング、本物の笑顔などの広く知られた心理テクニックはもちろんのこと、コラム的にFBI捜査官時代の活用例が紹介されていて興味深く読めます。

個人的にヒットしたのが「怒りの対処法」の部分。
相手が怒っていることを認識→闘争・逃走反応→冷静な思考・判断ができなくなる、という遺伝的プログラムを越えて「どう対処すべきか」が示されています。

仕事でクレーマーじみた人の相手をすると、「わめき散らして、一体何がしたいんだ」「なぜ解決策に目を向けないのか」「とんでもなく知能が低いのではないか」などと思っていましたが、闘争・逃走反応で認知能力にロックがかかっていると知ればこれも最も。タイミングを見計らい、最初からまともに相手をするのではない、うまい対処ができるようになるってもんです。

【本文より】
◯怒っている人は、よく考えもせずに話し、行動する。そして怒りが強くなるほど、認知能力が落ちる。頭に血がのぼっている人は、論理的に物事を考えられなくなっているため、解決策を示されてもすぐには応じることができない。

◯解決策を提示する前に、まず、相手に怒りをすべて吐き出させる必要がある。

◯怒っている人の中では、「闘争・逃走反応」が生じているため、論理的に情報を処理することができない。だからその場にふさわしい共感を示される分には違和感を覚えない。





■かつて流行ったFBI捜査官シリーズ。こちらは犯罪心理、異常心理のお話で毛色が違います。


似鳥昭雄『運は創るもの』(日本経済新聞社、2015)

15年4月の日経新聞「私の履歴書」に加筆したもの。ニトリ創業者の半生記。やんちゃな生きざまに連載時から話題になっていましたが、それらに対する著者コメントも追加されてさらりと読めます。

地元北海道での創業期、いきあたりばったりの家族経営、やがて師を得ての飛躍、「お、値段以上。ニトリ」での全国企業へと飛躍していく姿は成功者そのものです。

一方で、みずから落ちこぼれだったと語る青年時代、高校も大学も思うようには進学できずあれこれ手を尽くして潜り込んでいく実行力タイプでもあり、創業者タイプの人格がそのまま現れています。のちに出会う流通の師匠、渥美先生ののアドバイスも適度に聞き流して独自路線、成功したり失敗したり。あるときは気まずさから音信不通になってみたりとやんちゃな精神はそのままです。ある意味これがおっさん受けする爺殺し、人たらしの天分なのかもしれません。


【本文より】

◯「おまえは頭が悪いから、優秀な人材を使うしかない」という父の教えはずっと生きている。(p.184)

◯トップは長期的な視点で考える。オーナー経営であっても、社長業とは社員という「抵抗勢力」との闘いでもあると痛感している。(p.204)

◯[渥美先生の教え]
 「成功体験など現状を永久に否定して再構築せよ。守ろうと思ったら、衰退が始まる」「上座に座るような宴席には行くな。常に下座で自らついで回り、先人から学べ」(p.174)

◯交渉事は断られてからがスタートだと考えている。大半は3回断られたら、やめてしまう。私は4回目からが本番だと考えるようにしている。(p.128)

◯短所を直さず、長所を伸ばせ(p.284)

◯小成に安んじて、早く家を建てるな。係長時代に建てた家に社長は住めない。無理をすれば、借金返済で、やりたいことがやれなくなる。一生涯の目標が、自前の「うさぎ小屋」を建てることにあるとは情けないではないか。(p.318)

◯当時「夜中3時前に帰るのは男じゃない」と放言し、飲み歩くことを自粛することは全くなかった。道内中、どこでも遊びに行った。ブランデー1本を氷入れに入れて、みんなで空になるまで飲み回す。すると誰かがぶっ倒れたりして元気いっぱいの日々だった。(p.193)

堀田力『堀田力の「おごるな上司!」』(日本経済新聞社、1994)

京大法から検事となり、現場を経て法務省刑事局総務課長、官房人事課長を務めた著者の上司論。

世のあらゆる「上司」に自覚と反省を促すもの。古い本ですがなかなか刺激的です。

アドラー的には承認欲求を満たすための努力は不幸の始まりですが、本書は上司・部下に気に入られるという次元を超えて、ヒトとしていかにあるべきかという姿勢を問うています。
わが身を振り返るポイントに加え、ダメ上司の要件が網羅されています。


【本文より】
◯権力を利用して袖の下を貰うのはけしからぬ行為であるが、権力を利用して部下にいばり、私的快感を得るのも、同じくらい悪い行為だと思う。むしろ後者のほうが、人の心を直接傷つける分、悪質かも知れない。(p.1)

◯私自身、今後とも、身を引き締めて努力を続けていきたい。/誰にも、人をいわれなく不幸にする権利はないから。(p.211)

◯課長が不平不満ばかりいう人だった場合、まず間違いなくその課全体が腐ります。(p.186)

◯批評家 仕事の改善策が出されたとき、ただちにその難点を指摘して、したり顔をする人がいる。それだけしかしないなら、そんな人はいないほうがいい。(p.174)

◯批判 行動を伴わない批判は、偽善よりも悪質である。自己を正当化するために行う批判は、偽善に等しい。(p.170)

◯とくに理由もないのに休暇の承認を渋る上司は、勤務時間中に部下が遊んでいるのを黙認している上司と同様に悪い。(p.119)

◯これは、質問されたことを自分でもよくわかっていなくて、それを部下に知られるのが怖くてそうしているのだと思って間違いありません。つまり、自分自身の考えを持っていないか、指導する能力のない上司だということで、たいていこういう人がヒステリックな反応を示すものです。(p.114)

◯決裁 作るのはむずかしいが、ケチをつけるのは簡単である。(p.104)

◯むしろリーダーには、自分の能力を抑え、部下たちの能力を引き出して、それを仕事の上で活用していくことが求められます。(p.72)
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望月もちお

Author:望月もちお
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