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チャールズ・ペレグリーノ『ダスト(下)』(ヴィレッジブックス、2002)

チャールズ・ペレグリーノ『ダスト(下)』(ヴィレッジブックス、2002)

バイオSF

昆虫の大量絶滅による環境変化、食糧不足、またたく間に社会経済は崩壊し…
生き残った科学者たちは古代の琥珀から昆虫のDNAを採取、復活と環境改善に挑む。

一方でテレビ伝道師ジグモンドの狂信者たちは科学者の諸悪の根源として圧迫を強める。

地球規模の危機、限られた時間の中で役目を果たす科学者の生き様はハードSFの魂です。

巻末40ページにわたり「著者あとがき」として作内設定のリアリティチェックの整理が行われています。

【本文より】

◯「昆虫たちは、先にこの星にやってきた。そして人間たちがこの星にやってくるための下準備をしてくれたんだ」
 コヘアはうなずいた。
 「そしていま昆虫たちは、人間たちがこの星から退場するための下準備をととのえているわけさ」

◯地域生態系は、休戦によってのみ成立している。この休戦状態を持続させるものは、なにも考えず、なにも感じない地質学的な同意のみだ。

◯《こうするほかはなかった》ジグモンドはおのれを安心させた。《秘密を知るものが四人になっても、秘密を守ることは不可能ではない ー そのうち三人が死ねばいいのだから》

◯この点をもっとも端的にいいあらわしていたのは、シャロンが一番好きな叔母が結婚二十五周年の祝いの席で漏らしたひとことだろう。
 「あのね、シャロン。もしあのろくでなしを二十五年前に殺していたとすれば、十四年前には善行特典で刑期が短縮されて、刑務所から出られたはずなのよ」




■(上)は人物設定と前フリ 記事


ペレグリーノ『ダスト(上)』(ソニー・マガジン、2002)

ペレグリーノ『ダスト(上)』(ソニー・マガジン、2002)

サスペンスの皮をまとったバイオSF

ダニの異常発生、血吸コウモリの凶暴化、原因不明の異常事態。消える昆虫。
異常プリオン、ロードアイランドの封鎖、真相に迫りかけると同時に死に直面する科学者。

とSFの構成要素が盛りだくさんです。

ハードSFでは科学者の生き様も重要なポイントですが本書ももれなく。

といって『星を継ぐもの』のハントやダンチェッカーのようなダントツの主役は見当たりませんが、お話としてはその分悪役ジェリーが読ませます。
表向きは強烈な魅力を持ち周囲を惹きつける伝道師、つまづいて囚人となっても看守を丸め込む力量を持っています。下巻での活躍にも期待。

【本文より】
◯そしてジェリーの見たところ、母親は失読症の子どもたちに新しい道を示すという無駄な仕事で、知性という財産をみすみす浪費していた。

◯”無知が恵みである土地では、賢明になるのは愚行でしかない”

◯「わたしの業績に疑問をもつなと教えたりするのは、教師として適切ではないな。なぜなら、優秀な科学者ならば、すべてを疑ってかかることを決して忘れてはいけないからだ」




■下巻では40ページを費やして作者による「リアリティチェック」の解説が。SF設定好きにはたまらぬものです。 記事

島田荘司『アルカトラズ幻想』(文型春秋、2012)

島田荘司『アルカトラズ幻想』(文型春秋、2012)

SF要素ありのミステリ。大戦期のアメリカを舞台に、猟奇事件発生→2つめの事件→大学院生の論文→犯人逮捕・収監→不思議な国→謎解きと展開していきます。

この後半の不思議な国の部分、主人公格の記憶の混濁を描いていてまったく意味不明、呼んでいくのが非常にツライところですが、それだけに最後の謎解きパートで明らかにされていく過程がたまらなく快感です。

凄すぎる起承転結の具体例、あるいはここまでの「転」は他にないかとも思われます。

「よくわからんが、とにかくスゴイ」

細かいところでは、証拠書類として大学院生の古代地球における重力に関する論文を読んだ警官たちのとまだいが愉快です。


【本文より】
○「この惑星の上では、ホモサピエンスの直立二足歩行は危険な選択だったってことだ。引力が強すぎるから」
「だが、二足歩行するしかなかったろう」
ウィリーは言った。
「どうしてだ?」
「どうしてって…、四つん這いで地下鉄に乗れるか?どうやって改札を通る。四つん這いでどうやって自転車を運転する。署の連中がみんな四足で歩きはじめてみろ、フロアが狭くてたまらない」

小川一水『天冥の標 Ⅷ ジャイアント・アークPart2』

小川一水『天冥の標 Ⅷ ジャイアント・アークPart2』(早川書房、2015)を読む。

全10巻シリーズのうち8巻。のクライマックス。

臨時総督政府を倒し新民主政府大統領となったエランカ、世界の始まり探して旅立つセアキとラゴス、咀嚼者(フェロシアン)との戦いで重症を負ったアクリラ。3つのパートが絡み合いよいよお話の総仕上げに、といった趣。

暴君と思われた臨時総督政府を倒したエランカ含むセナーセー市の有力者たち。しかし「暴君」と思われた臨時総督の行動は外敵から惑星ハープCを守るためのものであり、新政府は人々を守るため、はからずもその「暴君」と同じ振る舞いをせざるを得ない状況となる。

SFに限らず長編のお話には付き物の管理職の悲哀、経営者の孤独などが描かれます。(『彷徨える艦隊』のリーダーシップ論にも)

【本文より】
◯そこで初めて、見えない槌を振り落とされたかのように思い至った。自分のことを誰かのようだと思っていたが−。
領主だ。これは領主そのものだ。それが統治者だということだったのだろう。いや、過去形にはできない。同じことを、これからやり始めるのだから。冷たい血で令状にサインして、二度と振り向かない背後に多くのものを置き去りにしていくのだ。

◯人間ができることには限りがあり、大体の者はこの次の食事か、せいぜい明日の朝食を手に入れるていどのことしか考えていない。大昔に裸で棍棒を握っていたころからそうだったし、今でもそうだ。ただ現代では、明日の朝食の心配をしなくても、決まりきったことさえしていれば勝手にそれが出てくるような仕組みが、立派に整えられただけだ。人間そのものはおそらく何も変わっていない。

筒井康隆『旅のラゴス』(徳間書房、S61/徳間文庫、H1)

生涯をかけて旅する男ラゴスを主役に据えた連作小説。一度滅亡した後の世界を舞台にした近未来SFですが、ハードSFのゴリゴリ感はなく一般にも馴染みやすいお話。

徹夜してでも読んでしまうほどに愉快な小説として各所のまとめサイトで取り上げられたことから、今年になってリバイバルブームが来たようです。

旅、とはいえ軽薄な通過型観光のそれではなく、ラゴスは村から街へ、街から街へと渡り歩き、そこで数年過ごして己の深みを増していきます。

あるときは遊牧民の集落、あるときは奴隷狩りに遭って数年間の鉱山労働、またあるときは太古の英知を求めて五年間の図書館籠り。

物語中盤にあたる図書館の村のお話が特に秀逸で、昭和ヒトケタ世代の著者の精神がにじみます。


【本文より】

◯四ヶ月後、おれは歴史と伝記に読み耽っていた。年代を追って史書を読み、各時代への理解を深めるため、それぞれの時代における重要人物の伝記はその時代の歴史に並行して読むという方法が、なんとぜいたくな、そして愉悦に満ちたものであったかは、かくも大量の書物に取り囲まれているおれにしかわからず、実際おれにしか体験できぬものであった。

◯かくも厖大な歴史の時間に比べればおれの一生の時間など焦ろうが怠けようがどうせ微々たるものに過ぎないことが、おれにはわかってきたからである。人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。
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望月もちお

Author:望月もちお
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