イーグルマン『意識は傍観者である』(早川書房、2012)

イーグルマン『意識は傍観者である』(早川書房、2012)を読む。

近年の脳科学の発展は著しく、これまでの常識がくつがえったり根拠なく経験則で語られていた事柄が理論付けられたりしています。

十余年前に教育を受けた身では、脳はシナプスで繋がった電気信号インターフェイスだ、という説明でしたが、実は、これに加えて脳内物質による化学インターフェイスとしての動きもしておるとか。

たとえば世にいう「虫の知らせ」は無意識下で脳が作動しており、「意識」はあとで結果だけを知らされるCEO的な立場(傍観者)である、などの興味深い指摘。


あるいは、意識が行動を命じてから筋肉が動いて活動に至るのではなく、反射的に筋肉が動くと同時に、そこへの意味づけとして「運動を命じた」と知覚されるなど、障害の例、知覚、多くのケースに基づいて興味深い論及がなされています。

ヒトを客体として見る、という点で脳科学や進化心理学は実に興味深い分野です。テレビの通俗健康番組で、娘が父の体臭を嫌うのは進化史的に説明がつく、などの話が伝えられますが、これも最近の研究成果だそうで。


【本文より】

◯生まれつき目が見えない人にも同じことが言える。彼らは何も失っていない。視界がなくなっている場所に暗闇を見ているのではない。視界はそもそも彼らの現実のパーツにはないのだ。ブラッドハウンド犬が感じる余分なにおいや、四種類の色覚受容体を持つ女性が感じる余分な色をわあなたが感じられないのと同じにすぎない。


◯進化は入念にあなたの目、内臓、生殖器などを形づくってきた。ーそしてあなたの思考や信念の特性も。私たちは細菌に対抗する特異的な免疫防御を進化させただけではない。人類の進化史の99パーセントにわたって、狩猟採集民族だった祖先が直面した特殊な問題を解決するための神経機構も発達させてきた。「進化心理学」の分野は、なぜ私たちは、こういう考え方をして、ああいう考え方をしないのか、その理由を探る。


◯最近、私の女だちの一人が月経による情緒変化で落ち込んでいた。彼女は青ざめた笑顔でこう言った。「あたしね、毎月二、三日は自分でなくなるの」。神経科学者の彼女はそのあとしばし考えて、こうつけ加えた。「それともひょっとすると、こっちが本当のあたしで、残りの二十七日間は実は他の誰かなのかも」。私たちは笑った。彼女はいかなるときも自分というものは体内の化学物質の総量で決まると考えて、臆するところがなかった。私たちが〈彼女〉だと思っているものは、時間平均バージョンのようなものであることを理解していたのだ。
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