筒井康隆『旅のラゴス』(徳間書房、S61/徳間文庫、H1)

生涯をかけて旅する男ラゴスを主役に据えた連作小説。一度滅亡した後の世界を舞台にした近未来SFですが、ハードSFのゴリゴリ感はなく一般にも馴染みやすいお話。

徹夜してでも読んでしまうほどに愉快な小説として各所のまとめサイトで取り上げられたことから、今年になってリバイバルブームが来たようです。

旅、とはいえ軽薄な通過型観光のそれではなく、ラゴスは村から街へ、街から街へと渡り歩き、そこで数年過ごして己の深みを増していきます。

あるときは遊牧民の集落、あるときは奴隷狩りに遭って数年間の鉱山労働、またあるときは太古の英知を求めて五年間の図書館籠り。

物語中盤にあたる図書館の村のお話が特に秀逸で、昭和ヒトケタ世代の著者の精神がにじみます。


【本文より】

◯四ヶ月後、おれは歴史と伝記に読み耽っていた。年代を追って史書を読み、各時代への理解を深めるため、それぞれの時代における重要人物の伝記はその時代の歴史に並行して読むという方法が、なんとぜいたくな、そして愉悦に満ちたものであったかは、かくも大量の書物に取り囲まれているおれにしかわからず、実際おれにしか体験できぬものであった。

◯かくも厖大な歴史の時間に比べればおれの一生の時間など焦ろうが怠けようがどうせ微々たるものに過ぎないことが、おれにはわかってきたからである。人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。
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